季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

半夏生(はんげしょう)

季節の区切りの一つに半夏生がある。また半夏生ドクダミ科の薬草の名前でもある。その葉が半分だけ白くなる。半化粧から来ているとの話もある。田んぼの雑草が白い花を咲かせる。それを言うこともある。
農民にとっては、初夏の農作業も一段落し、季節のうえで休養をとることになっている。というより、この時期までに農作業は終わらせるように、ということだろうか。また、この時期の野菜などには毒を含むものが多いので、注意するようにという習わしが多い。毒気が降ると言われていて、井戸に蓋をのせる習慣の地域もある。
この時期に食べた方がいいものが決められている。一番多いのはタコ。いまでもスーパーにタコが並ぶから、こうした言い伝えが生きているのかも知れない。脇道にそれるが、今やスーパーは給料日より年金の支給日の方が混むらしい。それだけ客が高齢化しているのだろう。さて、なぜタコなのだろう。タコの吸盤のように苗がしっかり根付いてくれるように、との思いが言い伝えになったのだろうと言われている。そのほか、うどんや鯖を食べる地域もある。
ハンゲという妖怪が出るので、農作業はするなという戒めを伝える地域もある。どうやら各地にさまざまな伝承として残っているが、広範囲に伝わって、内容が曖昧になったようだ。下のような句もある。
鋸に血を塗つておく半夏生 竹中宏
また、農家の土間には絵ごよみや食あたりをする食べあわせなどの紙が貼られていたものだ。半夏雨とは梅雨の終わりごろの雨。激しく降ることが多い。
絵暦を解く百姓に半夏雨 戸塚時不知