季語 日めくりエッセイ

木ノ内博道 俳句の季語に触発された日々の想い

春落葉(はるおちば)

一般に落葉樹は初冬に落葉する。ところが常緑樹は晩春に落葉する。むかし、我が家の前に大きな椎の木があってこの時期には葉を落としたものだ。あわせて竹やぶもあったから、我が家の落葉の時期は春だった。
椎の木はたくさんの実をつけて、その下にはトタン屋根の隠居小屋があったから、晩秋から冬にかけてどんぐりが落ちる。時間に関係なくトンカラカラと音がしたものだった。隣に住む私たちが気になるくらいだから、住人はうるさかったのではないか。
カラカラと転がったどんぐりは我が家に集まる。酔って遅く帰る私はそれで転びそうになったものだ。
なんのエッセイだったか宮沢賢治の「メッキのどんぐり」を「芽つきのどんぐり」と勘違いしたものがあった。どんぐりの話はきりもないから、今日は、トタン屋根に転がる音を思いだすにとどめておきたい。
もの忘れわらひあひたり春落葉 柴田白葉女